予備予選-終

予備予選の視聴もようやく終わりましたが、気がつけば一週間以上遅れていました。
概ね160名から60名ほどになった由、通過できた人、できなかった人、それぞれに運命が分かれたようです。

難しいのは中間の微妙なところにある人達で、その判断は紙一重であること、審査員の好みや判断基準、さらにはそれ以外の要素も関係するとすると、納得できない人達も少なくはないだろうという気がしないでもありません。


で、実はこの後、生意気ですが自分なりの総括的なことをほぼ書き終えていたのですが、最後の最後に出てきた中国人を聴いて、急遽変更してすべて消去。

後で名前を見たらジン・シーハン(Jin Zihan)とありました。
この人はちょっと次元の違う人で、それもあってトリを飾る人だったのだろうなぁと思いました。

技巧も完成された確かなもので、余裕があり、その余裕が演奏に自由と丁寧さの両方を与えており、さらにこの人独自の世界が広がっている。
長らく配信動画を見続け、おおよその感じがわかってきて気分もダレながら、半ば義務的に聴いてついに最後のひとりになったところ、どうも様子が違っており、つい集中して中飛ばしもせず、すっかり聴き入ってしまいました。

すでにピアニストである雰囲気があるし、演奏自体も必ずしも決まりきったものではなく、全体に自分自身があったし、わずかな冒険(その場その瞬間で反応してやっていること)もあって聴いていてワクワクさせられました。
指の動きにはおよそ無駄がなく、絶えずしなやかで合理的な動きを伴いながらの安定した弾きっぷりで、技術というものはある高みに達すると、それ自体が美しく流れていくようで、技術の美しさが音楽にも還元されていく面があり、この相互作用には風格さえ備わっている気がしました。

この人は今回の中心人物になるというか、ひとことで言えばスターになるひとりだろうと思いました。
さらに不思議なことには見映えもよくて、弾いている姿もサマになっていて、なんというか目にストレスがありません。

〜と、ここまで書いた時点で、万が一の確認のため、彼が予備予選を通過しているかどうか探してみたのですが、日本人のことが多くてなんだかよくわからず、夜中のことでもあり、あまり粘って調べることもできなかったので、もし通過できていない(ことはないと思うけれど)場合は、ちょっとマズイなぁと思いつつ、まあそれでもたかだか私がそのときにそう感じたというだけのことなので、そのときはそのときと開き直ることにしました。

最後になって、こういう演奏に接することができたのは、変な表現かもしれませんが救われた気がしました。

秋の本戦では、予備予選免除者も加わっての戦いとなるようですが、これは他のコンクールでの上位入賞が条件になるそうで、どういう人が出るのか、そのあたりの情報にはめっぽう疎いのでわかりませんが、あちこち渡り歩いてコンクールずれしたような人が勝ち進むより、できるだけ才能ある魅力的な人が出てきて、スッと栄冠を勝ち取ってほしいものだと思います。

はあー、慣れないことをして疲れましたが、おもしろくもありました。