CFX使用のコンサート

当初は行く気のなかったルイサダのリサイタルですが、ヤマハの新鋭CFXを聴けるのならとチケットを買いました。

CFXはまだ正式発売はされていないにもかかわらず、日曜日に福岡で行われた小曽根真氏の出演するコンサートにも早々とこのピアノが登場したらしいので、ヤマハ主導のもとこれはというステージには、全国どこへでもこの最新ピアノを送り込んでいるのでしょうね。まるで政治家の遊説のようですね。
それにしても現実は足やペダルを付けたり外したりを繰り返しながらのトラック長距離移動ですから、やはり相当痛むでしょうね。
ヤマハに確認したところ、ルイサダのリサイタルでもやはりCFXを使用するとの確認が取れました。

Youtubeでもこのピアノを使った披露コンサートの様子を見ることができますので、多少の印象は持ちましたが、やはり本物に勝るものはありませんから、ぜひとも拝聴することにしました。

アクロスにチケットを買いに行ったついでにいろいろとチラシを物色していると、6月30日、佐賀市でケヴィン・ケナーのショパンリサイタルがあることを発見!
彼はアメリカのピアニストで、1990年のショパンコンクールでは一位なしの最高位に入賞した、それなりの人ですから、チケットも安いし行ってみようかと思いました。
ところが、チラシを良く見てみると「公演時間1時間15分」などとわざわざ「普通より短いですよ」という意味のことが書いてあり、いささか首をかしげました。
さらに聞き慣れない名前の会場をネットで調べてみると、名前はホールでも床が平らな、ただの広い部屋に近いというか、会議室に毛の生えたようなところで、キャパは200人強、ピアノはなにかと尋ねたら、ヤマハのS6ということで、この瞬間わざわざ佐賀くんだりまで聴きに行くことを断念しました。

以前もシゲルカワイのSK-5やヤマハのS6を使ったコンサートを聴いたことがありますが、合わせものならまだしも、ピアニストのソロともなると、いかにこれらのピアノが普及品より上級機種とは言ってみても、根本的な力不足は否めず、聴きごたえも半減でした。自宅用としては逸品だと思いますが、ソロで純粋に聴衆に聴かせるためのピアノとしてはまだまだ遠く及ばないものがあり、ピアノがそれだとわかり一気に気分は萎えました。

10月には前回ショパンコンクールの覇者であるラファウ・ブレハッチが、オールショパンプロを引っ提げてアクロスにやってくるようです。
でも、一番惜しかったのは、つい先ごろ北九州でやったダン・タイ・ソンのリサイタルにうっかり行きそびれたことでした。
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楽器は生き物

我が家のピアノの整調(アクションなど様々なピアノ内の機械部分の働き具合の調整)を、とあるホールからご紹介を受けた方にお願いしていましたが、今日がいよいよその作業日でした。

午後から始まった作業は夜の9時近くまでかかり、ピアノ技術者の方のお仕事というのは高度な専門技術のみならず、すべてにおいて根気と忍耐の世界だということを再認識させられました。
その間、休みらしい休みもなく、食事もされずになんともお気の毒でもあり、申し訳なくもあり、ありがたくもありました。

今回の作業依頼の性質上、仕上げの調律のとき以外はほとんど音らしい音も出ない、ひたすら静かな作業でした。
それにしても、あの重くて持ちにくいアクションの出し入れ(いちいち横の机に運び出す)だけでも何回されたことか!
ピアノ技術者たるもの、まずもって腰が強くなければ務まらないようです。

ほぼ丸一日をかけての作業が終わり、さあいよいよ弾いてみたときに、期待値が高すぎたためか、確かによくはなっているものの、マロニエ君の反応が思わしくないと敏感に感じとられてしまったようで、こちらの期待に添えなかったという印象を与えてしまったのは、たいへん申し訳ないことをしてしまった気分でした。
そのとき感じたことは、ホールのピアノはステージ上にある限り、床以外には遮蔽物がなく、広大な空間で朗々と鳴るのに対し、家庭ではすぐ傍の壁や天井が制限となり、本来の開放的な鳴り方ができないというデメリットがあることをあらためて感じました。響きが違うと、それは勢いタッチ感にも確実に影響があるからです。

帰られてから遅い食事を済ませ、10時過ぎぐらいからちょっと集中的に弾いてみました。
実はこのピアノは普段はほとんど使っていないので、その点では半分は眠ったようなピアノだとも言えるのですが、一時間も弾いているとだんだん鳴り始めて、二時間ほど経った頃には同じピアノとは思えないほどにパワーが上がってきたのには驚きました。
まるで花のつぼみが一気に開いていくようで、鳴りだけでなく音の色艶も次々に加算されていくようです。
すると、今日の作業の結果もそれにつれて顔を出し始め、ようやくすべてが一つの流れとして収束してきたようです。
時計も12時半を過ぎたので、いくらなんでも止めにして、もう一度明日弾き込んでみようと思いました。

やはり楽器は、ただの機械ではない、生き物なんだと痛感です。
24時間除湿機を回すだけでなく、やはり適度に弾かないことには本来の力は急には出ないようですね。
とても幼稚で単純なことですが、忘れかけていたことを再度肝に銘じました。
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