あやかり番組

このところ、NHKではピアノ関連の番組が続いて一段落した感じですが、おそらくショパンコンクールで高まったであろう、ピアノへの関心に結びつけようとする狙いでしょうか?

BSクラシック倶楽部でも集中的にピアノ(しかもショパン)が登場し、今回のワルシャワに出場した韓国のイ・ヒョクさんが、コンクール直前に日本でオールショパンのリサイタルをやっていたのが2回にわたって放送されました。
本番練習を兼ねたステージ慣れのためのコンサートのようでもあったけれど、やはりコンクールでは望み得ない格段に落ち着いた演奏となっていたあたり、ワルシャワのステージでは実力のうちの、どれくらいが出せるかということも大きな課題なんだなぁと感じました。
それ以外にもあれこれのショパン演奏が放送されましたが、見落としや途中からというのもありました。

そして日曜夜のNHKスペシャルで、いよいよ今回のコンクールを追ったドキュメントに至りました。
しかしそれはわずか50分!
オリンピックより長い3週間にもおよぶ戦いだというのに、これはあまりにも短く、しかもNHKお得意の作り方、すなわちその中の幾人かにフォーカスして密着する構成だから、せっかく現地に乗り込んでいる甲斐もなく、全体の様子はほとんどなにも伝わらず却ってがっかりで、せめてもう少し、できれば前編・後編か、90分ぐらい、いっそEテレ・クラシック音楽館で2時間にしてほしいもの。

ずいぶん変わったなー!と思うところは、ナレーションで「スタインウェイ」とか「ベヒシュタイン」などとピアノメーカーの名前を言うところで、これは昔のNHKならぜったいにあり得ないことですね。

メーカーといえば、10年前のドキュメント「もうひとつのショパンコンクール〜ピアノ調律師の闘い〜」も再放送されましたが、これは100分ぐらいだからさすがに見応えがあるし、個人的にはこの番組の見どころのひとつは、ヤマハのチーム戦の様子ではないかと思いました。
いかにも日本人らしい特徴が表れていて、企業単位の組織的な挑戦。
険しい目線で客席から指令を出す人、従う人、メーカーきっての調律師さんだの現地の支店長さんだのと、スーツを着た人たちが一団をなし、そこには社内の厳しい上下関係やら何やらがありそうで、日本の会社の縮図を見るようです。
ステージのピアノをメンテするにも、チームで取り囲んでライトをかざし、あれこれと協議を重ねている様子は、これぞ日本!それぞヤマハ!という感じでした。

クラシック倶楽部に戻ると、いぜんは天才少年と言われた人がすっかり大人になっていたけれど、ショパンのエチュード(op.10)をガンガンに弾きまくって、はぁ…今どきこんな人もいるのか!?と、これはこれで驚きました。
近年は、誰も彼もが表面はやけに整った小利口な演奏が少なくない中、この人は正直といえば正直なのかもしれないけれど、あそこまでアスレチックな演奏をされてみると「おいおい!」といいたくなるのも正直なところで、さすがに見続ける意欲も気力も、かといって面白くもないから、数分でやめてしまいました。

実はそんなものより、大いに言いたいものがあって、以前なら書いたと思うけれど、ほとんど負の記述に終始しそうであるし、そういうものに駄文とはいえエネルギーを費やすことも馬鹿らしい気がして、思い切って止めることにしたら却ってサッパリしました。

で、それは飛ばしてもうひとつ、ブーニンの最近の様子を捉えたドキュメントがありましたが、かつての寵児が健康を害されたことは非常に残念であるし、痛々しい気持ちになります。日本が好きで、日本人の奥さんの献身に支えられ、近年は少し演奏も再開されたようです。
往年の切れ味は失われましたが、氏の演奏には彼なりの明確なスタイルがあり、じめじめしないセンスが今もあり、幻想ポロネーズの冒頭にそれが最も端的に聴えてきたときは、ハッと目がさめるようでした。
ルイサダとの深い友情も続いているようでした。